【執事の至高のおもてなし第5法則】
フレンドリーの法則

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執事がたどり着いた「フレンドリーの力」

ホスピタリティとは何か 
この問いに対し、私たち執事が20年にわたってたどり着いたのが「おもてなし7つの法則」です。その中でも、第5の法則である「フレンドリーの法則」は、初対面や限られた時間の中でお客様との信頼関係を築くために、もっとも即効性が高い技術と言えるかもしれません。

私たち執事の役割は、お客様の人生において非常に繊細でプライベートな空間に関わる仕事です。最初にお会いした瞬間から、お客様に安心感を持っていただけなければ、その後どれだけ完璧な準備やサービスを提供したとしても、心を開いていただくことはできません。だからこそ、私たちは「フレンドリーさ」を演出する技術を徹底的に磨いてきました。


本稿では、私たち執事の現場での経験と、心理学的・コミュニケーション学的な裏付けを交えながら、「フレンドリーの法則」がどのようにして生まれ、どのように活用されているかをご紹介します。


印象を変える3秒の魔法

「笑顔は最大の武器です」と言われることがありますが、それはまさに接客の現場において真実です。お客様と接する最初の3秒で、その人の印象の多くが決まるという研究(Mehrabian, 1971)もあるほど、第一印象はその後のコミュニケーションに大きな影響を与えます。

私たち執事は、どれほど疲れているときでも、どれほどタイトなスケジュールでも、玄関でお客様をお迎えする際には、鏡の前で口角の位置をチェックし、笑顔を意識してからご挨拶するようにしています。

ある朝7時、私が深夜まで準備していたお客様のご訪問がありました。そのときも変わらぬ笑顔でお迎えしたところ、「朝からこんなに笑顔で迎えられると元気が出る」とゲストから言われたのです。

心理学では「表情フィードバック仮説」(Strack et al., 1988)が知られています。これは、笑顔のような表情を作ることで、脳が「今は楽しい状況だ」と認識し、実際に気分が前向きになるというものです。つまり、笑顔は感情の表現であると同時に、感情を生み出すスイッチにもなるのです。


なれなれしさとの一線を引く敬語が信頼を守る

笑顔で接するということは、お客様に対して「私はあなたに対して好意的で、歓迎しています」というシグナルを送ることです。ただし、ここで重要なのが「親しみやすさ」と「なれなれしさ」の違いを明確に認識しておくことです。


私たち執事は、どれだけ長くお付き合いが続いているお客様であっても、敬意を忘れることはありません。たとえば、何十年もお仕えしているお客様の中には「もう敬語はいらないよ」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、私たちは言葉遣いや振る舞いの中に、最低限の礼節と節度を保ち続けるよう心がけています。


この点で重要なのが「敬語の使い方」です。敬語は単なる言葉のマナーではなく、「私はあなたを尊重しています」という明確なメッセージになります。心理学の「ポライトネス理論」(Brown & Levinson, 1987)でも、敬語や丁寧語は対人関係の中で「フェイス(社会的尊厳)」を守る手段であり、相手との適切な距離感を保つために有効だとされています。


15分で関係構築するための執事の会話術

初めてのお客様と接する際、私たち執事は「15分で信頼関係のベースを作る」ことを目標にしています。そのために最初の15分で行うことには、ある種の型があります。


たとえば、笑顔でのご挨拶に加え、お客様の服装や身につけているアイテムをさりげなく観察し、会話の糸口とすることがあります。あるとき、珍しい時計を着けていたお客様に「その時計は○○製でしょうか。以前ご紹介いただいた方も愛用されていて、記憶に残っておりまして」とお声がけしたところ、「よく気づいたね、これはあの限定モデルなんだ」と笑顔がこぼれました。


これはただの雑談ではなく、「私はあなたをよく見ており、敬意を持って接しています」という非言語的なメッセージです。こうした一言が、おもてなしの空間を大きく変えるのです。


フレンドリーの技術を支える執事の訓練

私たち執事の現場では、新人の研修段階から「フレンドリーさを持った礼節」というテーマでトレーニングを行っています。以下の3つの基本を徹底して実践しています。

1. 表情の管理     :鏡で毎朝の表情をチェックし、自然な笑顔を準備します。
2. 言葉遣いと声のトーン:敬語と、柔らかく落ち着いたトーンで安心感を演出します。
3. 相手の反応観察   :言葉だけでなく、目線や仕草、姿勢を観察して会話のテンポを調整します。


これらの訓練は、即効性のある信頼構築ツールとして、執事業の現場で高く評価されています。

「笑顔 × 敬語」は最強のホスピタリティ

人間関係は感情によって築かれます。アメリカの著名な心理学者デール・カーネギーはこう語っています。

「人は論理ではなく感情で動く。そして最初の印象が、次のすべてを決める」

笑顔と敬語を備えた接遇は、感情に働きかけ、心の扉を開かせる力を持っています。私たち執事が信頼してきた「フレンドリーの法則」は、人と人の距離を一瞬で縮める、最も効果的なホスピタリティ技術のひとつです。

01

笑顔は準備である

自然な笑顔は日々のトレーニングで作られます。
鏡の前で口角チェックを

02

敬語は信頼のバロメーター

正しい言葉遣いは、どんな場でも相手の心を開くプロフェッショナルの証です。

03

観察力を研ぎ澄ませる

相手の好み・変化に敏感になりましょう。気づきが会話の扉を開きます。


執事の「フレンドリーの法則」をあなたの現場でも

私たち執事は、お客様の人生にそっと寄り添いながら、深い信頼関係を築く仕事です。その第一歩が、「笑顔」と「敬語」で始まるフレンドリーな接遇なのです。この法則は業種・職種を問わず、すべてのホスピタリティの現場で応用可能です。


参考文献・出典


• 新井直之(2016)『執事が教える至高のおもてなし』きずな出版.  https://arainaoyuki.com/?page_id=18
Albert Mehrabian (1971), Silent Messages
Strack, F., Martin, L. L., & Stepper, S. (1988). Inhibiting and facilitating conditions of the human smile: A nonobtrusive test of the facial feedback hypothesis.
Brown, P., & Levinson, S. (1987). Politeness: Some Universals in Language Usage.

記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

本物執事の新井直之
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