
はじめに:なぜ執事の問題解決力が企業に役立つのか
企業の経営者、役員、そして管理職の多くが抱える悩みは共通しています。それは、「複雑な課題が止まってしまう」という状況です。
どれだけ会議を重ねても、どれだけ資料を作り込んでも、なかなか前へ進まない中長期のテーマがあります。
部門間調整、新規事業、重要顧客対応、組織改革、後継者問題。いずれも単純な論理だけでは動かず、感情・利害・立場が複雑に絡みます。
実はこれは、富裕層のお客様にお仕えする執事の世界でもまったく同じです。
・お子様の受験戦略の設計
・家族の難病治療に最適な医師の選定
・親族間の人間関係の改善
・事業承継・資産承継のサポート
これらはどれも「正解が一つではないテーマ」であり、しかも数ヶ月から数年単位の長期で伴走する必要があります。そして途中で必ず「壁」にぶつかります。
その壁をどう乗り越えるか。ここにこそ、執事の問題解決力が存在します。そしてそのスキルは、企業の管理職・リーダーにとって極めて実用的な技術なのです。
本コラムでは、企業担当者に向けて「なぜ執事から学ぶのか」を体系的に解説し、さらに執事式の三つの突破方法を紹介します。
執事の問題解決力とは何か
ホスピタリティとおもてなしに基づく“実践知”
サービス・ホスピタリティ・おもてなしは違う概念である
執事の世界では、サービス・ホスピタリティ・おもてなしは明確に区別されます。
・サービス:決められたことを正確に提供する
・ホスピタリティ:相手の立場・感情に寄り添い、支える
・おもてなし:相手の期待を先回りし、良い意味で裏切る価値を生む
問題解決が必要になるのは、まさにホスピタリティとおもてなしの領域です。「相手の感情」「関係者の思惑」が入り混じる場面では、論理一本では通用しません。
執事は「一発アウトの信頼環境」で問題解決している
富裕層のお客様との関係は非常にデリケートです。
・一度のミスが信頼喪失につながる
・情報管理の甘さは即契約終了
・不用意な言葉が問題を悪化させる可能性がある
つまり、執事が置かれているのは「一発アウト」の環境です。
そこで結果を出すためには、情報・感情・利害・時間軸を統合し、最適解へ導く高度な問題解決力が求められます。
これは企業で言えば、最重要顧客担当、経営陣の右腕、プロジェクトマネージャーと同じ構造です。
だからこそ、執事の思考は企業が使える「再現可能なスキル」なのです。
なぜ執事から学ぶ問題解決力が企業にとって価値があるのか
富裕層のお客様=企業における「最重要顧客・経営層」である
執事のお客様は、経営者、創業家、医師、弁護士など、社会の意思決定層です。
企業に置き換えるなら、執事はつねに「最重要顧客」を担当している状態と言えます。
・要求の精度が高い
・期待値も高い
・状況が変わりやすい
・長期の信頼関係が不可欠
執事=超・高機能な経営者専属秘書である
執事は単なる身の回りのお世話ではありません。お客様の人生全体を支える存在であり、企業風に言えば…
・社長秘書
・経営企画
・顧客関係管理
・ファミリーオフィス
・コンシェルジュ
これらを横断して行う“超・高機能秘書”です。この中で磨かれる問題解決力は、企業の経営や管理職にこそ必要な能力です。
執事のスキルは「企業現場でそのまま再現できる技術」である
執事が使う問題解決は特殊能力ではありません。組織で再現可能な「技術」です。
・相手思考
・視座変換
・徹底思考
この三つは、人材育成・マネジメント・部門調整・リーダーシップのすべてに応用できます。
執事式三つの突破方法① 徹底的に相手思考になる
ここで言う「相手」とは誰か
相手思考とは、お客様本人だけに向くものではありません。
・医師
・教育関係者
・弁護士
・家族
・社内外の利害関係者
解決のキーパーソンそのものが“相手”です。企業では、顧客・上司・部門・パートナー企業が対象になります。
心理学的背景:視点取得と自己決定理論
相手思考は単なる「気遣い」ではなく、心理学的にも根拠があります。
・視点取得(Perspective taking)
・自己決定理論(自律性・有能感・関係性)
執事の事例:難病治療の専門医探し
最初の打診で医師に断られる。しかしその背景を深く理解し、医師のリスク・時間制約・責任を整理し直すことで協力姿勢が生まれる。
企業でも同じ構造の突破が可能です。
執事式三つの突破方法② 視座を変える
視点と視座は違う
・視点=何を見るか
・視座=どこから見るか
視座を変えることで、問題そのものの構造が変わって見えます。
時間軸と全体像で俯瞰する
・5年後から現在を見る
・関係者全体のバランスで捉えなおす
・家族全体、組織全体、顧客全体の「機能」を見る
執事の事例:家族関係の改善プロジェクト
当事者同士の話し合いでは解決せず。視座を“家族全体の機能”に置き換えたことで突破口が生まれた。
企業の組織対立でも同じ処方箋が使える。
執事式三つの突破方法③ 徹底的に考える
悩むことと考えることは違う
悩む=感情の渦。考える=構造化された問いの継続。執事がしているのは後者です。
意識し続けることで情報の質が変わる
・選択的注意
・カラーバス効果
意識を向けることで日常の情報が“問題解決の材料”になるのです。
長期伴走で生まれる突破
富裕層ご家族のキャリアサポートでは、数年先の決断を支える情報が日常の徹底思考から生まれる場面が多くあります。
執事式問題解決力は企業のどの領域で活かせるのか
・管理職研修
・リレーション営業
・プロジェクトリーダー育成
・富裕層顧客ビジネス
・医療・教育・士業向け研修
・経営層の意思決定支援
特に、中長期でテーマが止まりやすい企業にとって、執事式の三つの思考法は強力な武器となります。
講演・研修をご検討の担当者へ
実施の流れ
・お問い合わせ
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・講演または研修の実施
・事後振り返り
企業の具体的な課題を題材に、執事式の突破技法を現場で使える形へ落とし込みます。
参考文献
新井直之(2018)『執事が教える思考のおもてなし』きずな出版