執事だけが知っている
大富豪がファーストクラスを選ぶ本当の理由

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「贅沢だから乗る」の誤解——執事が見た富裕層の本音

「富裕層はなぜファーストクラスやグリーン車を利用するのか?」

この問いに対し、「お金があるから」「贅沢したいから」と答える方も多いかもしれません。しかし、執事として日々富裕層のお客様にお仕えしている立場から見れば、その認識は表面的な理解にすぎません。

確かにファーストクラスやグリーン車は価格が高く、ゆったりとした座席や丁寧なサービスなど、快適性に優れていることは事実です。しかし、富裕層の方々がそれらを選ぶ理由は、単なる快適性や贅沢感ではなく、「安全性」「合理性」「人間関係の精査」「心理的な余裕」といった深い価値観に基づいています。

執事の経験から見る「安全性」という最優先事項

ファーストクラスを選ぶ理由として最も大きいのが、「セキュリティ上の安心感」です。富裕層の多くは、自身や家族の安全に対する意識が極めて高く、不特定多数と交わる環境を極力避けようとします。

ファーストクラスの利用者は限られており、搭乗手続きもスムーズです。専用カウンター、専用保安検査場、専用ラウンジ、優先搭乗という一連の流れにより、他の乗客と接触する場面が最小限に抑えられます。執事として同行する私たちも、空港での混乱や不測の事態に備え、お客様を最も安全なルートでご案内します。

ある50代の富裕層経営者のお客様は、過去にエコノミークラスの待機列で他の乗客に話しかけられ、その内容がSNSで拡散されてしまった経験がありました。それ以来、「誰が自分を見ているかわからない」という不安を解消するために、国内外問わずファーストクラスの利用を徹底されています。

新幹線グリーン車は“戦略的な避難ルート”

国内移動においても、同様の配慮が必要です。特に日本の新幹線には、空港のような金属探知機や手荷物検査がありません。万が一の事態に備えて、富裕層のお客様はグリーン車の利用を選択されるケースが圧倒的に多いです。

グリーン車は編成の中央に位置し、左右どちらにも逃げやすい構造になっています。また、車掌が常駐しているケースも多く、万が一の際にすぐに対応してもらえるという安心感があります。

さらに、グリーン車に乗車しているのはビジネスパーソンやハイエンド層が多く、公共の場でのマナーが行き届いており、トラブルや不快な思いをするリスクも低いのです。

“人間関係”の精査と、執事の役割

執事が同伴する移動には、もうひとつ大切な観点があります。それは「誰と同じ空間にいるか」です。

富裕層の方々にとって、偶然居合わせた人がどのような人物かは重要な問題です。過去には、隣席の乗客から不要なビジネス提案をされたり、盗撮や盗聴の被害に遭ったケースもありました。執事として、お客様が「誰と同じ車両にいるか」「視線がどこから届くか」にも細心の注意を払います。

例えばある海外在住の資産家ご夫妻が日本に一時帰国された際、グリーン車を希望された理由は「日本語で話す内容を周囲に聞かれたくない」というものでした。執事としては、周囲の乗客層やその日の混雑状況を事前に調査し、必要であれば1車両丸ごと貸切にするよう鉄道会社と交渉したこともあります。

「移動」は富裕層にとって“思考の時間”

富裕層にとって、移動時間は単なる移動ではありません。思考を整理したり、読書に集中したり、時には瞑想に近い精神的リセットの時間でもあります。執事は、この静けさと集中の質を守る空間をデザインすることも重要な仕事です。

以前、IT業界の著名な起業家のお客様から「飛行機の中は唯一誰にも邪魔されない“自分だけの時間”だから、機内では絶対に声をかけないでほしい」と言われたことがあります。その後、私は機内サービスも事前に調整し、食事の提供やアナウンスの時間を最小限にするようCAに伝達。お客様が集中して内省できるよう、全体のオペレーションを設計しました。

執事は“移動設計士”でもある

執事はただ付き添うだけの存在ではありません。移動手段の選定からチケットの手配、時間配分、荷物管理、同伴者や現地スタッフとの連携、万が一の際のエスケーププランまでを包括的に担います。富裕層のお客様の行動には、必ず“目的”と“理由”があり、それを的確に支えるのが執事の仕事です。

まとめ:選ぶのは「贅沢」ではなく「リスク回避と価値の最適化」

ファーストクラスやグリーン車は確かに高価ですが、富裕層にとっては「贅沢品」ではありません。むしろそれは、「無駄を省き、トラブルを避け、心身の質を保つための最適な手段」です。

執事はその価値観を深く理解し、行動の先を読み、時には静かに、時には迅速に、その場に最適な判断を下します。富裕層の方々が選ぶ「移動のかたち」には、人生哲学が凝縮されています。そしてそれを裏で支えるのが、私たち執事の仕事なのです。

よくある質問(FAQ)

記事執筆者・監修者

新井 直之
(NAOYUKI ARAI)

執事
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本執事協会 代表理事
一般社団法人 日本執事協会 附属 日本執事学校 校長

大富豪、超富裕向け執事・コンシェルジュ・ハウスメイドサービスを提供する日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を2008年に創業し、現在に至る。

執事としての長年の経験と知見を元に、富裕層ビジネス、おもてなし、ホスピタリティに関する研修・講演・コンサルティングを企業向けに提供している。

代表著作『執事が教える至高のおもてなし』『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』。日本国内、海外での翻訳版を含めて約20冊の著作、刊行累計50万部を超える。

本物執事の新井直之
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