執事の歴史

イギリスの使用人一覧,日本の執事について
執事の英語名であるバトラー Butler の名前の由来

英語で執事を「バトラー(Butler)」と言います
元々、このバトラーの名前は、古フランス語の「bouteiller」(ボトルを意味する)から来ており、お酒のお酌係を意味しています。

なぜ、英語なのにフランス語が出てくる理由についてですが、所説ありますが1066年にノルマンディー公(フランス)がイングランド王になったことにより、フランスの貴族階級の人々、それに従う従者、騎士などもフランスからイギリスに住み、貴族階級はフランス語を庶民階級は中英語にフランス語が流入しました、
貴族階級はフランス語を話す人たち、庶民は英語(中世英語)を話す人たちになりました、そのため、貴族階級の一部である執事の発音も英語由来ではなくフランス語が由来となったと考えられます。


なぜ、バトラー=執事という名称になったのか?

先ほどは、執事(バトラー)の名前の語源について説明しましたが、今回はButler=執事にどうしてなった?のかについて説明します。
実は、近世時代にはバトラー=「食事かた」「膳部」「給仕人」「下男がしら」とも訳していたり、なぜ現在では執事=バトラーになったのかは特定できていません。
さらにインターネットや書籍にも詳細な情報がなく、今回は歴史の専門家と国立国語研究所広報室に質問をして返答していただいた情報を元に記載しております。

執事の語源について
執事の読みは「しつじ」ですが、他にも「シュウシ」や「シッシ」はたまた「シツシ」とも音読されます、現在までに様々な意味として使われてきました。

執事という単語は古代国家である新羅の国家機関として、古代日本の文献(漢文)に登場してきます。
平安末期の公家の漢文に出てくる「執事」古典中国語での意味用法そのままで、家格や職務・職掌、役名に関わることなく、単純に「そのことを執り行うこと」「それにあたる人」を指していました。
その後、朝廷にある役職の別当・頭(かみ)に次ぐ役職名をさしたり、親王・摂政・関白・大臣邸を司る長官の役職名などに使われました。
そして、初の武家政権である鎌倉幕府では、執権、政所、問注所長官の異名に使われました。
その後の武家政権の室町幕府では将軍や公方の補佐職の名称として使われ、江戸時代では若年寄の異名としても使われていました。

以上のように、補佐する仕事で上級使用人であるバトラーに朝廷、幕府で同じ意味で補佐する上級の役職であった執事が当てられた可能性が高いです。

中世時代の執事 執事の始まり

中世の貴族の城館の中心は天井の高いホールでした。そこでは、主と上級使用人、時にはお客様をお迎えして食事を行っていました。そのホールの奥の壁には3つのアーチがあり、中央の出口はキッチンへ向かう通路に繋がっており、左右の扉はそれぞれ、ビールやロウソクを用意する「飲料保管室」とパンを出す「食品保管室」に続いていました。飲料保管室長は「ヨーマン・オブ・ザ・バタリー」または「バトラー」と呼ばれ、主な業務はワイン、ビールなどの酒類の管理でした。食料品保管室長は、「ヨーマン・オブ・パントリー」または「パンター」であり、パン、調味料、食器を管理していました。17世紀頃までに、これらの役割が結合し、中世では酒類や食器を担当する中間管理職であった執事が19世紀~20世紀にかけてワインセラーと銀食器を管理する業務を継承しつつ、給仕、接客、人事、経理の担当をするようになり、重要な地位に上り詰めました。そのため、時代によって執事の定義は変わっていきました。


執事になる方法 (中世・近世時代)


私たちのイメージでは、執事は代々執事として、同じ主に幼い時から主の子どもに仕えるイメージがありますが、イギリスの貴族、大地主が自分の邸宅の下働きとして幼い子どもを雇うことは主流ではありませんでした。使用人を目指す者は、小学校を通学しながら、または卒業してから、近所の農家や商店などで手伝いとして働き始めました。そこで1年から1年半ほど働いて仕事に慣れたら、次のステップとして牧師や地元の有力者に仲介を頼んだり、新聞広告を見たり、使用人紹介所を利用するなどしてスキルアップを行っていました。執事は転職を繰り返すことが多く、例として、上司の執事が引退、降格などをしない限り、自分の地位が上がるのは難しく、使用人紹介所や現在仕えている貴族、大地主の紹介で異なる邸宅に転職していくのが一般的でした。これは、年功序列から転職して年収を上げていくことが一般的になった日本と似ているかもしれません。その一方で、猟場番人や庭師の息子たちは、専門職であるため、幼い時から仕事を覚えるために邸宅の見習い職に就くことも多かったようです。


どのように執事になるのか?

ボーイ
新人の使用人としての初めての職はボーイでした。ボーイは邸宅のすべての雑用を任されており、力仕事から靴磨き、銀食器磨き、食事の給仕まで行っていました。一言でボーイと言っても様々な種類があり、ホールボーイ、ナイフボーイ、ブーツボーイ、ランプボーイなど邸宅の規模が大きいほど仕事が細分化されていました。今では邸宅ではモニターなどで電気を管理しますが、当時はランプ一つにも掃除やオイルの交換の必要があり、それが数百あると非常に時間がかかることが容易に想像できます。

フットマン
下働きのボーイからフットマンになることは出世を意味しました。フットマンは鮮やかな服を身につけて、客の対応や馬車での外出の付き添い、食事の給仕などを主な仕事としていました。見た目が一番重要視されるフットマンは、高身長で外見が良いと採用されやすく、給料も良かったようです。今でもイギリス王室の式典などで、きらびやかな服を着て馬車の後ろに立っているフットマンを確認することができます。

当社では、入社した新人は全員が執事としてのキャリアをスタートします。彼らは「アソシエイト バトラー」という役職に就き、将来的には上級執事である「エグゼクティブ バトラー」を目指しています。


執事(バトラー)または従者(ヴァレット)になるか

フットマンを経験し、様々な知識とスキルを身につけた後、上級使用人である執事や従者の道に進むことになります。これらの職では特定の制服はなく、私服を着用することになっていました。この二つは同等の地位にあり、担当する業務が異なりました。従者(ヴァレット)は一人の主だけに徹底して仕え、旅行の随行や出先で主の着こなしに間違いがないかのチェックなどを行っていました。一方、執事は家全体の管理監督がメインで、他の使用人の採用の判断や資産の管理などが主な業務でした。実は、日本の執事のイメージは執事(バトラー)よりも従者(ヴァレット)の方が近いです。

当社の執事は、資産管理やマネジメントから、お客様のご旅行の随行や手配まで、幅広い業務を行っております。また、中世や近世における従者や執事が担っていた業務にも対応し、現代においてもその伝統を継承しています。

参考資料
図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔 著書 村上リコ

現代(日本バトラー&コンシェルジュ)の執事

ランプが電球に代わり、馬車が車に変わるなど、テクノロジーの進歩やAIの出現により、執事に求められるスキルも変化してきています。優雅に紅茶を淹れたり、ワインをサーブする機会は減りましたが、パソコンを使った資産管理や全体の管理、マネジメント、そしてお客様のリクエストに全力で応えるという、時代が変わっても変わらない精神は今も続いています。